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2011/2「この試練、成し遂げて」

2011年2月「この試練、成し遂げて」

遂に今年もこの日がやってきた。

主君である魔帝マルスーンを除いて、如何なる戦場、如何なる戦いでも無敗を誇る、魔帝軍きっての実力者、

「魔剣将軍」シスカ。

その彼女が決死の覚悟で挑む日がある。

 

それは、二月三日節分。

 

幾年前であっただろうか、主君が異世界のとある国の風習を聞きつけ、それを行うようになったのは。

 

「節分の日、年の数だけ大豆を食べると、その一年は無病息災で過ごせる」

 

我が軍でその任を仰せつかったのは、シスカ、レン、リリンの三姉妹。

生まれて千数百歳の妹たちは難なくこなすが、七億年ちょっと生きているシスカにとって、

これは正に一つの戦いである。

 

一時、「恵方巻き」で茶を濁す時期もあったが、その年は魔帝城に勇者が訪れたり、主君が魔王検定に落ちるなど散々な年だった。

そうしてやはり豆を食べる事になったのだが、勇者はやはりやってくる有様で、もうそれに御利益があるのかどうかすら怪しい。

 

しかし、確実なことが一つだけあった。

それは毎年、豆の数が一粒ずつ増えていると言う事。

長寿、それも飛び抜けて長い時間を生きるシスカにとって、端から見た一粒との重みは全く違う。 十年で十粒、百年で百粒増えるのだから。

 

節分の後は一月はベットでうなされ、何も喉を通らない。

そんな状況を初めて知ったマルスーンの提案で恵方巻きになったのだが、その気遣いも数年で水泡と帰した……。

 

「シスカ様、今年の大豆7億ちょっと。用意できたミノ!」

 

仕事をやり終えた達成感からか、明るい調子でミノタウロスがシスカに声をかけた。

この日だけは鬼役であるマルスーンに、豆を投げつけ、追い回せるので心なしか朝から上機嫌である。

 

「今年の大豆の出来は最高だったミノ。いつもよりも少し大きめでおいしいミノよ!」

 

グッと親指を立てて、決めるミノタウロス。

 

「良いでしょう。おいしいに越したことはありません! 今年も食べきって見せますよ!」

 

シスカも気合い十分。

いざ、節分部屋へ入ったシスカだった……が?

 

「こっこれは……!」

 

部屋の中いっぱいに積まれている升に入っていたのは、大豆ではなく、豆腐だった。

 

「マルスーン様が、

 

『毎年ご苦労様。いつも食べるのが大変そうだから、今年は1つあたり300gも大豆が入った豆腐にしてみたよ。 コレでキミにかかる負担が減る事を願うよ』

 

といって、全部豆腐にしてくれたミノ」 いつもよりも心なしか升の数が多い気がする……。

だが、ここは!

 

「ミノ太郎、マルスーン様に伝えてください。 シスカは、マルスーン様の優しさに胸がいっぱいになりました。

有り難うございます……。と」

 

豆腐の入った升のタワーを前に、一歩踏み出すシスカ。

 

「わかったミノ。健闘を祈るミノ」

 

まじめな顔でその場を後にする、ミノ太郎と呼ばれたミノタウロス。

 

彼が去った後、シスカの孤独で果てしない戦いが始まった。

大豆に加え、水という新たなる戦力を加えた敵は、彼女の前に無言で立ちはだかっていた。

 

 

  関連絵

 

2010年2月「今年はちょっぴり不安?」

 

2008年2月「この一年……全ては私の手にかかっている!?」

 

 

勇者屋キャラ辞典:シスカ
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